下痢・軟便の原因早見表

下痢・軟便の原因早見表

アイコン 猫の下痢・軟便の「原因」を特定するのは、実は、とても難しい問題です。獣医師でも、はっきりと原因を特定しないまま、対症療法に入る(とりあえず整腸剤や下痢止めなどを処方して、様子見する)ケースも少なくありません。

が、やはり「原因」を絞り込めた方が、その後の症状改善に役立つことは言うまでもなく、その為には、猫さんの一番身近にいるママパパが、下痢・軟便を引き起こす要因を、ある程度把握していることが大事だと思います。

※下痢と軟便※
一般的に、いつもよりちょっと柔らかい程度の(形はある)便を「軟便」
便の全体もしくは一部が、形をなさない泥状・水状のウンチの場合を「下痢」と呼ぶことが多いようです。

下痢・軟便の原因早見表

アイコン 日常的な原因でおこる下痢・軟便

食べ過ぎ
子猫の場合、置き餌を全部食べてしまってお腹をこわすこともあります。成猫の場合は、精神的なストレスなどで、いつもより食べる量が増えていないかをチェック。他に、普段はママが量をコントロールしてご飯をあげているのに、ねだられていつも以上にあげてしまった場合など。
フードの銘柄を変えた
猫の胃腸は、新しい食べ物に慣れるまでに日数がかかるといわれます。フードを新しい銘柄に変える時は、一気に全替えせず、ほんの少しの量からはじめ、少なくとも1週間はかけて慣らしていきましょう。ただし、新しいフードの材料に、その子にとってアレルギーをおこす素材が使われていたりすると、何日たっても下痢が止まらないこともあります。
人間の食べ物を食べた
例えば、乳糖不耐性の猫さんは、牛乳を飲むと下痢をします。人間が食べている、味の付いた食べ物や油っぽい料理などを、そのまま与えるのも下痢の原因となりえます。さらには、タマネギやチョコレートなど、重篤な中毒症状を起こす食品もあります。基本的に味のついた人間の食べ物は食べさせないように。また、手作り食を作る場合は、猫に与えてもいい食材かどうかを事前に調べましょう。
誤飲
誤飲はとても怖いですが、特に「殺虫剤」「洗剤」「床用ワックス」「入浴剤」などは、中毒性の下痢を起こします。それらの薬剤を猫が直接なめてしまうのを防ぐことはもちろん、手足や体につくことのないよう(毛繕いでなめ取ってしまうので)、洗剤やワックスなどの使い方と収納場所には、くれぐれも気を付けましょう。他に誤飲で多い物は、ヒモ・食品用ラップ・薄いボタン・子供のおもちゃなど。
ストレス(心因性)
新しい猫さんが家族に加わった、引っ越しした、長距離の移動を経験した、ママパパの生活時間帯がそれまでと変わった、御近所の工事が始まった、家族が病気になった、お外猫さんが玄関やベランダに遊びに来るようになった。などなど、猫さんのストレスとなる事柄は案外多いものです。
発情
発情がくる少し前からウンチが緩くなり、発情期間が終わると下痢も治るというケースは、ホルモンバランスの変化が影響していると思われます。ただ、下痢の原因が他にある可能性もあるので、一度病院で相談してみましょう。
薬の影響
服用している抗生物質や抗ガン剤などの副作用で、下痢・軟便をすることもあります。異変に気づいたら、すぐに薬を処方してくれた病院に相談しましょう。
季節の変わり目
季節の変わり目の寒暖の差で、食欲が落ちたり、ウンチが緩くなったりする猫さんも居ます。特に、猫さんの苦手な冬(寒さ)の到来時に下痢・軟便になることも。この場合も、下痢の原因が他にある可能性もあるので、一度病院で相談してみましょう。
換毛期
換毛期の毛繕いで、毛球が胃腸内にたまっていると、それが腸管を傷つけ、下痢・軟便の原因になることがあります。わが家のラピも、換毛期はウンチの調子が確実に悪くなり、ウンチの最後に鮮血が出たりします。こまめなブラッシングやシャンプーで積極的に抜け毛を落としましょう。また、ラキサトーンなどの毛球除去剤で症状がやわらぐケースもありますが、油分が多いため逆に下痢が悪化する場合も。

アイコン 病気や寄生虫が原因の下痢・軟便

大腸炎
大腸におこった炎症の総称。しばしば胃腸炎を併発。鮮血便や粘液便が出る。しぶりと呼ばれる、頻回の排便姿勢が見られるが、1回の量は少ない。原因は、毛球や誤飲物による腸管への刺激、細菌感染など。
急性胃腸炎
激しい水下痢をしたり、血液が混じる。トイレに頻繁に行く。嘔吐をともない、命にかかわることも。原因として、猫伝染性腸炎ウイルスなどのウイルス、また腐りかけの食べ物や冷たい飲み物でも、おきることがある。
慢性胃腸炎
軽い下痢が何日もつづく。嘔吐は伴わない場合もある。急性胃腸炎が完治しきれず慢性胃腸炎になることも少なくない。ストレス、寄生虫、毛球症でも慢性胃腸炎になりやすい。
ウイルス感染症
ネコエイズ(ネコ免疫不全ウイルス感染症)や、ネココロナウイルスに感染した時は、慢性的な下痢・軟便に。ネコ伝染性腸炎(ネコ汎白血球減少症)や、FIP(ネコ伝染性腹膜炎)の発症では、急性の下痢・軟便を起こすことが多い。感染症の予防の基本は、完全室内飼い。ネコ伝染性腸炎はワクチンで防げます。
細菌
サルモネラ…激しい嘔吐と下痢、血便で急死することも。猫伝染性腹膜炎と症状が似ている。
カンピロバクター、大腸菌…腸管内常在菌なので、猫そのものには強い症状はおこらないことが多い。人間にも感染するので注意。カンピロバクターは鶏肉に多いので、与える際は、よく加熱して与える。
寄生虫・原虫
◎回虫
虫体が大型のため腸粘膜に炎症を起こしたり、腸を詰まらせたりして、腹痛や下痢・軟便、嘔吐などの症状を起こす。消化吸収が妨げられ、痩せてくる。子猫は症状が重く現れやすい。
◎鉤虫
無症状から死亡まで症状は様々だが、一般に食欲不振、血便、体重減少など。貧血症状が出ることも。子猫は症状が重く現れやすい。
◎条虫
それほど下痢の症状は重くないことが多い。猫に寄生するのは、ノミを媒体とする「ウリザネ条虫」ヘビやカエルを媒体とする「マンソン裂頭条虫」など。
◎鞭虫
盲腸に寄生する。軟便、排便の最後に血液の混ざったどろっとした粘液の排出など。寄生数が多くなると下痢やひどい粘血便がおこり、栄養不足、脱水、貧血も起こる。
◎原虫
コクシジウム…小腸粘膜の細胞内で分裂増殖を繰り返す。便の中には「オーシスト」が排泄され、それを口にして感染するケースが多い。特に子猫が感染すると、下痢、血便、消化不良、貧血、衰弱などの症状が現れ、発育不良や死亡に至ることも。
ジアルジア※1…主に小腸に寄生。「栄養体」は腸管で増殖し、「シスト」は便の中に排泄され、次の感染源となる。脂肪分をを多く含んだ軟便や下痢便をする。一見おさまったように見えてもしつこく繰り返すこともあり、特に多頭飼いの場合、定期検診は全同居猫を対象にするのが望ましい。
腸トリコモナス…腸管内に寄生。「シスト」のステージはなく、栄養体を直接口から取り込み、感染する。病原性はあまり強くないが、子猫の下痢の原因の一つとなりやすい。
トキソプラズマ…ネコ科動物のコクシジウムの1種。食欲不振、発熱、下痢、軟便が見られるが、特に目立った症状がない場合も。増殖型と呼ばれる虫体が全身の細胞で増殖する時期には、消化器症状、呼吸器症状、神経症状などが認められる。
クリプトスポリジウム…コクシジウムの1種。細胞侵入性が無いので、本来病原性はそれほど強くないが、免疫抑制状態に入ると、下痢が長期化する。
リンパ腫・腫瘍
リンパ腫や腫瘍が消化管に発生した場合、嘔吐、下痢、食欲不振などの消化器症状を示し、腸管が穿孔すると腹膜炎を起こす。
便秘、巨大結腸症
腸内にウンチがたまり酷い便秘に悩まされる。基本は便秘症状だが、腸に詰まったウンチの脇から水状のウンチが流れ出るために、下痢と勘違いされることも。重症の巨大結腸症では手術が必要。
膵炎
下痢・嘔吐以外に、元気と食欲の低下が見られる。肝炎、胆管炎、糖尿病などを併発しやすい。猫伝染性腹膜炎、トキソプラズマ症、猫ウイルス症鼻気管園などの感染症が原因で発病。肝臓・胆管・小腸の病気がきっかけで膵炎になることも少なくない。
猫のIBD
嘔吐、下痢、食欲不振、血便、体重減少などの症状が単一あるいは複合で現れる「炎症性腸疾患」の総称。具体的な病名としては「リンパ球性プラズマ細胞性腸炎」「好酸球性腸炎」など。症状が良くなったり悪くなったりを繰り返すことが多い。
※参照>>「猫のIBD」
LGS
「腸管浸潤症候群(LGS)」は疾患ではなく、腸管壁の細胞同士の間に大きな空間ができてしまった状態を指す。この空間から薬物や毒素、病原体、本来とりこまないはずの大きな食物分子などが体内に侵入し、単に下痢・軟便の原因となるだけでなく、結果的にアレルギーや自己免疫疾患などの様々な疾患の引き金となる。
※参照>>コロ出版 本村伸子著「胃腸が弱いではすまされない〜LGSの危険信号〜」
甲状腺機能亢進症
甲状腺ホルモンが異常に分泌されるため、急に活動的になる。水を飲む回数とオシッコが増える。食欲も増えるが、食べているのに体重が減ってくる。下痢、嘔吐、脱毛などの症状をともなうことも。
尿毒症
下部尿路症候群、腎不全などの病気が進行すると、腎機能が低下し、有害物質を体外に排出できない「尿毒症」をおこすことがある。食欲が落ちる、激しく吐く、脱水症状、けいれんなどの他に、下痢をすることも。早急に処置しないと命の危険がある。

※1:我が家では次女ルキアをキャッテリーさんからお迎えした際に、ルキアが持っていたジアルジアが先住のラピスとルナに感染し、全頭駆虫をしても再発をくりかえし、大変苦労したという経緯がありますので、ジアルジアについては別にコンテンツを準備中です。


下痢・軟便に気づいたら

アイコン 早急に受診の必要があるかどうか、かかりつけの病院に問いあわせしてみましょう。たいてい、下痢が1回でおさまっていて、本猫に元気がある場合は、そのまま様子を見てくださいと指示されると思いますが、場合によっては、たかが下痢と侮れないケースもあります。素人判断せず、先生の指示を仰ぐことが大切です。

◎愛猫の状態を伝える時は、以下の点をチェック
*いつ下痢をしたか
*1度で止まったか、その後何度もトイレに行くか
*便の柔らかと色はどうか
*粘膜っぽいものや血がついているかどうか
*元気と食欲はあるか、嘔吐をしていないか

◎検便を持参する際は、以下の点に注意
*なるべく全体を持っていく(ウンチの量や形状を見てもらうため)
*ビニール袋やアルミホイルなどに包み、水分が飛ばないようにする
*病院に持っていくまでの間は、冷暗所に置く
*なるべく排便後時間の経過していない、新鮮なものを持参

寄生虫・原虫などは、排便して時間の経過した便からは見つけにくいと言われます。せっかく検便をしても、排泄後数時間経った便では「下痢の原因」を見逃してしまうことになりかねませんので、そういう場合は、猫さんのおしりから直接便を採ってもらい、検便してもらいましょう。
また、寄生虫・原虫が疑われる時は、1回だけでなく、日にちを変えて何度か検査する事も大事です。(1回の検便では見つからないこともあります)